定量的に表現する|ビジネスの基本

定量的とは

仕事の現場では、さまざまな物事の状態や状況を相手と共有する必要があります。

相手とは、上司や部下である場合もあります。あるいは顧客や取引先担当である場合もあります。もしかすると、あったことがない相手である場合もあるでしょう。

しかし何かの物事の状態や状況の情報を正確に共有し合うことで、次のステップへ進むのです。情報共有が正確でなければ、物事が進まないばかりか、トラブルに発展する場合もあるのです。それらの状況を防止するには、定量的表現で正しく情報共有する必要があります。

当記事のテーマであるビジネス文を書く場面での「定量的表現」「定性的表現」とは、どのように違いがあるのかを解説します。

目次

定量的に表現する|ビジネスの基本

日本語では、物事の状態や状況を表す言葉が実にたくさんあります。

実は私たちは、生まれ育った環境等の違いによって、言葉の表現から理解する情報には違いがあります。

定量的・定性的という言葉遣いを日常の中ですることは、あまりありません。しかしビジネスの場面では必要な言葉なのです。ビジネス文を書く場面だけではないのです。

定量的とはわかりやすく言えば

定量的表現とは、わかりやすく言えば、物事の状態状況を数量で表す表現です。

例えば、100個、100回、100g、100分などという表現です。言い換えると、客観的とも言い換えられます。例えば、「◯◯◯が100個あります」と言えば、Aさんにとっても、Bさんにとっても、100個は100個です。

ところが、「○○○がたくさんあります」という表現をしてしまうと、確かにAさんにとっては「たくさんの量」かもしれません。しかしBさんにとって「思ったよりも少ない量でした」と認識する可能性があるのです。

また、上司が「後でミーティングをする」といった場面では、上司は10分後位あとのつもりかもしれません。しかし部下は1時間後くらいだと思った、となるかもしれません。

定量的に表現することで、個人の感覚による判断ではなくなります。

前述のケースを繰り返すなら、100個は誰に取っても100個という状況状態を共感できるようになることが、定量的に表現することのメリットです。ビジネスの場では、数値化できる物事を数値化して表現するのは、自分と相手との認識のずれが発生しないからです。

定性的と定量的の違いは

定量的な表現は前述の通り数値や数量で表現する方法です。対して定性的表現とは、数値化していない表現・数値化できない状況について表現する場合に使います。

上記の事例の場合、「たくさん」「少ない」「後で」が定性的表現になります。日常的なコミュニケーションの中では定性的な表現が多用されます。しかし実は定性的な表現に対する理解は、受け手の認識で左右しますので、発信者が意図したようには伝わらない場合が多いです。つまり定量的表現とくらべると、曖昧で抽象的な表現に聞こえます。

また、数量的な感覚が個人の主観に依る部分が大きくなります。個人の主観で感じ取ることになりますので、発信者と受信者との間で差異が生まれやすくなります。

しかし、すべての物事が数値化できるものではありません。そのような場合には、定性的表現を使うことになります。ただ本当には共感できていないかもしれないという前提は残ります。

多くの場合が個人の感覚によるものだからです。

例えば、アスリートが「これまでの人生の中で、最高の喜びです」と発言した場合に、「なるほど」とは思いますが、実際にはどのくらいの喜びなのかは当人にしかわかりません。

食レポで芸能人が「美味しい!」というのも、「美味しいんだろうな」と思いながら、どのくらい美味しいのかは分からないものです。

しかし、それが定性的表現です。ですので認識の違いで誤解が生まれやすいとも言えます。ビジネスの場面で、定性的表現を使うと自分と相手の間で認識のずれが発生しやすくなります。

定量的な表現でビジネス文を書く

社会人が仕事で書く文章・話す文章について、数値化できる物事の状態状況は、できるだけ定量的表現で書くことです。

ビジネス文では発信者と受信者の感覚の違いがありますと、後にトラブルやクレームに発生してしまいます。人間には物事を「脳」で見たいものを見て、「脳」で聞きたいものを聞くようにできているからです。

曖昧な表現は、自分にとって分かりやすいように理解するという特性があるのです。ですから、あとで写真を見ると気づかなかったものが写っているし、音源を聴けば、気づかなかった音が聞こえるのです。

言葉の表現に対する誤認からトラブル発生実例|定性的表現がNG

営業が顧客に不動産の売買契約の説明をする際に、物件価格の他に諸費用が100万かかるというケースが有りました。

営業の定性的表現が顧客に誤解を生んだケース

営業マンは「諸費用は100万円ほどになります。この物件の諸費用はそれほど多い金額にはなりません」と話しました。事実、不動産購入で諸費用100万円は安いほうです。

しかし後日顧客が「諸費用が100万円もかかるなんて聞いてないぞ」とクレームが発生しました。「それほど多くない金額だといったから数10万円だと思っていた」とトラブルになったのです。

これは実例です。受信者は聞きたい部分だけを記憶し、見たい部分だけを見ます。

実例では、営業が顧客の手元に打ち合わせメモの写しを残しており、そこに100万円と明記されていたことで、トラブルは収束しました。顧客はメモを見ずに、営業の言葉の中で、自分にとって印象的だった言葉だけを記憶したのです。

このケースのような思い込みは、よくあるケースです。この営業は、「100万円」という定量的表現だけで説明すべきだったということになります。

定量的に表現しないと相手と正しく共有できない

日頃から、定性的表現で曖昧な表現に慣れてしまっている人にとって、定量的表現は「強く」感じる可能性があります。

「曖昧な表現」というよりも「強くない表現」「柔らかい表現」として、定性的表現を使いがちになる人がいます。

しかし前述のように、定量的表現と定性的表現を同時にした時に、顧客は自分にとって耳障りがいい定性的表現を受け取ったあと、自分の感覚で事実をご認識してしまいました。ですので、仕事では、自分と相手が情報を正しく共有する必要があるのです。定性的表現は耳障りが良い反面、仕事の伝達表現としては、ハイリスクなのです。

営業と顧客の関係以外にも、毎日のように「言葉の行き違い」などと言われる現象が発生しています。

多くの場合、定量的表現で情報を正しく共有していれば、発生しないトラブルなのです。

例えば30分後にミーティングをしたいなら、「あとでミーティングします」ではなく「30分後にミーティングします」と伝えるべきなのです。あくまでも可能な限りです。

ケースによっては、曖昧だと感じつつ、定性的表現をすることも有りえます。伝え方やその前の根回しなどが順調でなければ、伝えた途端にトラブル発生になる可能性もあるからです。

ビジネスにおいての文章力で最も重要なことは、伝えたい内容が伝わる文章になっているのかどうかです。最大の肝です。

定量的な評価が公平性・客観性を確保する

会社においては従業員の評価などにおいても定量的な評価でなければ、客観性を維持できなくなります。定性的な評価は主観的になりがちであり、評価される側にとっても納得感が薄いものになってしまいます。

ただし、結果としての成果だけの定量的評価ではなく、プロセスにおいても定量的な評価を行うことで、評価される側には公平感が生まれます。

まとめ

仕事での伝達表現はリスクを考慮すれば、基本的には、定量的表現でコミュニケーションを取るべきなのです。

慣れないうちは、「何時」「何日」「何回」などを定量で表現することは、強すぎて感じる人もいると思いますが、余計な行き違いや、トラブルをなくすることに繋がります。

ビジネスの伝達は、定量的表現で伝え合うことです。

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