3年ごとに行われているOECD(経済協力開発機構、本部はフランス)のPISA(学習到達度調査)では、世界72カ国の15歳を対象に、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの習熟度の調査を行っています。
日本の15歳の読解力が順位を下げたことが話題になった事があります。
日本の若者の読解力が下がったのは、本を読まなくなったからだということでした。しかし読書量が減少しているのは若者に限ったことではありません。
日本人の読書量が減っている|読書の頻度は世界の平均以下
最近の若者の読書離れや子供の読解力低下が話題になる一方、多くの社会人が注目されないのは何故なのでしょうか。
実際には、様々な民間調査を始め、政府(文化庁)の調査結果でも本を読まないのは若者に限らないということが分かります。
読書量が少ないのは若者だけではない|文化庁データ
平成30年度の文化庁の「国語に関する世論調査」(対象は全国16歳以上の男女1,960人)によれば、読書について以下のことが明白になっています。
1)1ヶ月に読む本の数・・・最も多かった回答は「読まない」47.3%、次いで「1〜2冊」37.6%
2)読書が必要な年代は・・・最多回答は「10歳代」40.7%、次いで「9歳以下」が18.8%
3)読書量は減っているか・・最多回答は「減っている」67.3%、次いで「変わっていない」が24.3%
驚くべきことは、月に3冊以上の読書をすれば、日本人の上位15%に入るということです。毎月3冊以上の読書をする人にとって、未来の出世と高収入のチャンスが約束されたようなものです。
またさらに驚くべきことは、読書が必要な年代の考え方です。一般的に、人生の約半分は社会人として約40年間働くことになります。社会人として成果を出して評価されていくか、評価によって出世と収入アップするものです。
そのために重要なのは、学歴ではなく社会人になってからの読書量です。この質問の回答で、20代・30代・40代・50代だと回答した合計は13.1%にしかなりません。確かに子供の読書は重要ですが、社会人40年間の勉強となる読書量の合計が13%ではあまりにも少ない。特に30代〜50代では、各年代に1〜2%しかありません。
読書量より読書頻度の方が重要
日本の読書に関する調査では、読書量や読書時間に関する調査項目が多いのですが、読書の性質からすると重要なのは読書頻度と考えられます。
読書の性質とは、読書による情報をどのように記憶しているのかに関することです。
人間の記憶は、読書に関するものとして短期記憶と長期記憶に大きく分かれます。読書による記憶はまず短期記憶として認識され、数分から数時間でどんどん忘れていきます。翌日には3割程度しか残っていません。
一度しか読んでいない本の内容を忘れてしまう現象の原因は、短期記憶にあります。しかし短期記憶と同じ情報を何度かインプットされ続けると、短期記憶は長期記憶に移行されなかなか忘れない記憶になります。
ですので、読書を勉強に役立てようと思えば、次々と新しい本を読むよりも同じ本を何度か繰り返して読む方が理解と記憶が進みやすくなるのです。
また2〜3日に一度で数時間の読書をするよりも、1回30〜40分でも毎日読書を繰り返し、読書頻度を高めるほうが記憶に残りやすく効果的になるのです。
日本人の読書頻度は世界平均以下
Growth from Knowledgeが2016年に行い、2017年に公開した「読書頻度に関するグローバル調査」によれば、日本人の読書頻度は世界の平均を大きく下回っていることがわかりました。
調査対象は、世界17カ国の15歳以上の22,000人です。調査方法は、インターネット調査です。
読書頻度調査の結果は、「毎日・ほぼ毎日」と回答した読書頻度の高い人は、全体平均で30%であると分かりました。残念ながら、日本は読書頻度が高い人は20%しかいないのです。
また、「月1回」に「ほとんど読まない」と「全く読まない」を合計すると56%であり、先の文化庁の調査結果に近いと感じます。最も読書に熱心なのは、中国で36%の人が「毎日・ほぼ毎日読書をする」と回答しています。これは調査方法がインターネット調査であったことも関係しているかもしれません。
中国では月収1.5万円以下の貧困者層が6億人いるとされています。今回の調査はインターネット環境のあるユーザーが対象ですので、調査結果には偏りがあると考えられます。だからといっても、日本人の読書頻度が低いことには変わりがありません。
日本の読書頻度の順位は、17カ国中で15位です。
順位 | 国名 | 読書の頻度(毎日・ほぼ毎日読書をしている) |
---|---|---|
1位 | 中国 | 36% |
2位 | イギリス | 32% |
2位 | スペイン | 32% |
4位 | イタリア | 30% |
4位 | アメリカ | 30% |
6位 | ロシア | 29% |
6位 | カナダ | 29% |
8位 | フランス | 27% |
9位 | アルゼンチン | 26% |
9位 | ブラジル | 26% |
11位 | ドイツ | 25% |
12位 | オーストラリア | 23% |
12位 | オランダ | 23% |
14位 | メキシコ | 22% |
15位 | 日本 | 20% |
16位 | ベルギー | 19% |
17位 | 韓国 | 13% |
日本の読書頻度が世界の平均以下になった原因は何か?
日本の読書頻度が世界の平均以下になった原因は、複数の要因が考えられます。
まず、現代社会においては、スマートフォンやタブレット、テレビなどのメディアが増え、情報を得る手段が多様化したことが挙げられます。これにより、若い世代を中心に、読書に割く時間が減少しているという傾向があります。
また、教育現場においても、授業の時間割やテキストの内容によっては、読書に対する教育的な機会が不足しているという指摘があります。特に、読書が自己流で行われることが多く、指導や指標が明確になっていないことが背景にあるとされています。
更に、ストレスや疲労などの問題も、日本人の読書量低下に影響を与える可能性があります。これらの問題によって、読書に割く時間が減少し、本を読むことが贅沢に感じられるようになっているという見方もあります。
総じて、現代社会における生活環境の変化や教育環境の問題、そしてストレスや疲労などの生活要因など、多様な要因が絡み合って、日本人の読書頻度が世界の平均以下になっていると考えられます。
読書しない人が多い環境は読書する人にとって逆にチャンスかも
世界と比べても本を読む人が少なくなってしまったわけですが、考えようによっては、この場面で読書をする人は、チャンスを手にする可能性があります。
一つの理由としては、読書することが珍しくなっているため、読書すること自体が目立つことになります。周りから注目を浴びることで、自己表現やアイデンティティー形成に繋がることもあります。
また、読書しない人が多い環境では、読書に対する需要が高まる可能性があります。たとえば、映画やドラマの原作小説がヒットした場合、小説を読んでいる人たちが話題を盛り上げ、その結果、小説自体の需要が高まることがあります。
更に、読書しない人が多い環境では、本屋さんや図書館などの読書施設が閑散としている場合があります。そのため、静かな空間で読書することができ、集中力を高めることができます。
もし毎月3〜4冊の読書を継続すれば、上位15%の人に入るのです。上位15%と言えば、企業の中の管理職以上の人数の割合にも見えますし、高年収の人の割合にも見えます。読書と年収の関係は科学的に証明されているデータはありません。しかし結果として、高年収の人は読書をする人が多く、読書をしない人が年収が低いことは明白です。
まとめ
日本は世界の中でも本を読む人が少ない国だとわかったと思います。
ですので、本を読む人にとっては、ラッキーな環境とも言えます。
今の読書量が平均月に1冊なら、週に1冊読めるように頑張ってみませんか。時間は移動時間やスマホの時間からスキマ時間をかき集めましょう。1日30分から1時間作りましょう。
本は概ね1冊200ページ前後(実際150ページから多い書籍で300ページ)、文字数は平均10万文字ほどで作られています。一般的な人の読書速度は1分間に500文字とされますので、10万文字を読むには単純計算で200分、3時間半くらいです。
単純計算では、毎日30分〜40分の読書すると、1週間にほぼ1冊を読めます。このスタイルで読書を数ヶ月続けると、上位15%の状態が続きます。自分の中と周りからの評価に、間違いなく変化が起きます。
人から良い評価を受けられることが続いていけば、仕事が面白く楽しくなっていきます。出世や収入にも変化が現れます。
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