読解力の低下が話題になるたびに、問われるのは小学生中学生の読解力低下です。しかし学校読書調査の結果を見れば、問題なのは、小学生中学生ではないことがわかります。
読解力は知識の獲得や情報の理解、問題解決能力の向上など、学校や社会生活において欠かせないスキルです。特に中学生や高校生の時期は、学業や将来の進路を考える上で読解力が重要な役割を果たします。では、なぜ読解力が重要なのでしょうか?
まず、読解力は学習の基盤となるスキルです。教科書や参考書、文学作品などのテキストを正確に理解し、情報を取捨選択する能力は、学校の授業や試験において必要不可欠です。また、読解力が高まれば、新たな知識を効果的に吸収し、知識の総合的な理解力を高めることもできます。
読解力を鍛える本の活用法
本を読まない人の割合は不読率で表されます。
学校読書調査によれば、過去10年ほどの間、小学生の不読率は約5%、中学生が10〜15%、高校生が42〜55%となっています。また大人の不読率は、文化庁の「国語に関する世論調査」の4.読書についてで確認することができます。16歳以上の男女の不読率は47%です。
16歳以上の大多数は社会人で構成されています。つまり社会人の約半分が本を読まない人であるということです。読解力を鍛えるべきなのは、子供よりも大人ということです。ニュースバリューがないと考えられているのか、取り上げられるのは、常に子供です。
さらに、社会生活においても読解力は重要です。情報化社会では、様々な文書やメディアが溢れており、それらを正確に理解する能力が求められます。ニュース記事や専門書、インターネット上の情報などを適切に読み解くことで、情報の信憑性を判断し、意思決定を行うことができます。
読解力の鍛え方とは?
読解力を鍛えるためには、いくつかの方法やテクニックを活用することが重要です。以下では、読解力の鍛え方について詳しく説明します。
1)アクティブリーディングの実践
アクティブリーディングは、受動的にテキストを読むのではなく、積極的に関与し理解する読み方です。以下の手法を活用してアクティブリーディングを実践しましょう。
- 質問を立てる: テキストを読む前に、自分自身に質問を立てましょう。読みながらそれに答えを見つけることで理解が深まります。
- メモを取る: テキストの要点や重要な情報をメモすることで、読んだ内容を整理しやすくなります。
- 積極的な参加: テキストに対して意見や感想を持ちながら読むことで、理解がより深まります。
2)スキミングとスキャニングの活用
スキミングとスキャニングは、テキストの効率的な読み方を支援するテクニックです。
- スキミング: テキスト全体の概要を把握するために、見出しや章立て、図表などを目ざとく見ることです。
- スキャニング: 特定の情報を素早く見つけるために、目的のキーワードやフレーズを探し、スキップしながら読み進めます。
3)推論力と推測力の養成
推論力と推測力を高めるためには、さまざまなジャンルや文体のテキストを読むことが重要です。以下の方法を試してみましょう。
- 文脈理解: テキストの文脈を読み取り、言外の意味や著者の意図を推測しましょう。
- 文章構造の分析: パラグラフやセンテンスの関係性を把握し、文章の構造を理解することで、論理的な流れや主張を推測できます。
4)定期的な読書習慣の確立
読解力を鍛えるためには、定期的な読書習慣の確立が重要です。以下のポイントに注意しながら、読書を継続しましょう。
- 適切な難易度の本を選ぶ: 自分の読解力に合った本を選び、少しずつ難易度を上げていくことで成長を促しましょう。
- 集中して読む: 静かな場所で集中して読むことで、理解度や集中力を高めることができます。
- レビューや感想を書く: 読んだ本についてのレビューや感想を書くことで、理解度を確認し自己評価することができます。
これらの方法を組み合わせて実践することで、読解力を鍛えることができます。
本を活用した読解力トレーニング法
本を活用することは、読解力を鍛えるための効果的な方法です。以下では、本を活用した読解力トレーニング法をいくつか紹介します。
テキストの選択と分析
自分の読解力に合わせた適切な難易度の本を選びましょう。初心者の場合は、比較的簡単な文体やストーリー展開の本から始めると良いでしょう。
選んだ本を読む前に、タイトルや目次、図表などを分析し、テキストの構造や内容の予測をしましょう。これにより、読む前からテキストに対する理解を深めることができます。
アクティブリーディングの実践
テキストを読む前に、自分自身に質問を立てましょう。読みながらそれに答えを見つけることで、テキストに対する積極的な関与と理解が深まります。
テキストの要点や重要な情報をメモすることで、読んだ内容を整理しやすくなります。また、後で復習する際にも役立ちます。
テキストに対する批評的思考の養成
テキストに対して常に疑問を持ち、情報の信憑性や論理性を検証しましょう。主張や意見を批判的に考えることで、読解力が向上します。
テキストの背後にある著者の意図やメッセージを考えることで、文章の裏側を読み解く力が養われます。
文脈理解と文章構造の分析
テキストがどのような文脈や背景で書かれたものなのかを理解しましょう。時代背景や文化的な要素などを考慮することで、テキストの理解が深まります。
パラグラフやセンテンスの関係性を把握し、テキストの構造を分析しましょう。主張や例示、対比などの要素を見つけることで、テキスト全体の意味をより明確に理解することができます。
これらの読解力トレーニング法を本の読み方に取り入れることで、より効果的に読解力を鍛えることができます。
読解力を鍛えるおすすめの本(中学生向け)
中学生向けには、読解力を鍛えるために適した本が多くあります。以下にいくつかのおすすめの本を紹介します。
図書館戦争(としょかんせんそう)は、有川浩(ありかわひろし)氏によって書かれた小説シリーズです。このシリーズは、架空の近未来を舞台に、図書館と情報統制を巡る戦いを描いています。
物語は、主人公の桜井雪人(さくらい ゆきと)が、自由な読書と情報の普及を守る図書隊(としょたい)に加わるところから始まります。彼は図書館隊員として、図書館の目的である「人々の知識の自由な獲得と発信」を守るために戦います。
このシリーズは、読解力を鍛えるだけでなく、社会的な問題についても考えさせられる作品です。図書館を通じて情報の重要性や言論の自由、個人の権利などについて考えることができます。また、著者である有川浩氏の筆致は独特であり、ストーリー展開もスリリングで読みごたえがあります。
読解力を鍛える本を紹介(社会人)
社会人として読解力がなければ、仕事の指示を受けても間違えた仕事をしてしまいます。しかし月に1冊の本を読み始めて、急に読解力が身につくはずもありません。少なくとも1年程度、毎月1冊以上の読書を続けることです。そうすれば、平均1冊以上となり、一般的な読解力がついてるはずです。
「鍛える」には、できるだけ毎日の行動にすることです。週に一度数時間の読書をするよりも、毎日20〜30分続けることが、鍛える=トレーニングになります。
読解力を鍛える本|大人の読解力を鍛える
まさにタイトル通りの本です。著者の齋藤孝氏は、テレビへの露出が多い教育学者であり、著書もたくさんあります。読解力についての解説に始まり、小説や新聞などを読んで読解力を高めるトレーニング方法について、各場面に合わせて、細かく解説されています。新書サイズで持ち歩きやすいので、外出先のスキマの時間に取り出して、1項目ずつ読んでいくのにも最適です。
読解力を鍛える|読解力の強化書
読解力と言えば、文章を読んで理解する能力と答えるのがこれまでの一般的な答えでした。しかし現在では相手が何を言いたいのかを理解する能力ともいわれます。佐藤優氏の本は、まさに文字になっていない行間から、相手のことを読み取ることを読解力だと定義しています。
さらに「読解力」が低い人は、仕事でもプライベートでも損な人生になると、指摘しています。読解力があれば、人間関係もうまくいき、最小限の力で成果を上げることができるとしています。
読解力を鍛えるに相応しい思考についての本として紹介します。
読解力を鍛えるには理由がある
読解力を鍛える本として、比較的新しい本を2冊紹介しました。読解力に関連する物事は時代と共に変化しています。また読解力も、文章を理解することから相手を理解することへの時代は変化しています。メールやSNSなどコミュニケーション方法も大きく変化しています。
今や、大人も読解力を鍛えねばなりません。紹介した2冊の本を読んでくださると、今更なぜ読解力を鍛える必要があるのかもお分かりになるでしょう。
当記事では、その一部について解説をいたします。
読解力を鍛えれば会話の行き違いやミス・トラブルがなくなる
今や仕事のコミュニケーションは、ほとんどメールです。中にはSNSを仕事で利用する会社もあるようです。しかし利用の仕方自体は、メールの使い方で運用しています。
テキストになって言葉・文章によって、仕事のやり取りをしています。テキストでは、顔の表情や目の動きや声色などが表現されません。良くも悪くも、文字に明快に表現されます。顔の表情や心の動きを相手に伝えておきたいなら、表現する必要があります。
読み手側も同様です。前述の佐藤優氏の本に書かれているように、行間から相手の気持ちを読み取ることをしなければ、会話の行き違いが発生する可能性があります。相手との関係性によっては、そのトラブルは、契約関係のキャンセルにつながるかもしれません。
SNSに慣れてしまった学生が、そのまま短文でのコミュニケーションを仕事に持ち込めば、大変なことに発展する可能性があります。悪い意味にとらえない人は、ごく少数の人しかいません。社会を構成している年代で考えるとわかりますが、SNSの短文メッセージが通用するのは、ごく一部の世代だけだからです。
読解力を鍛えると間違った情報に惑わされなくなる
また読解力が低いばかりに間違った情報に右往左往させられている人もいます。今はさまざまなことを調べる情報源としてネットを使うことが一般的です。
しかしネット上の情報は、古い情報と新しい情報が、同居しています。さらに情報源が定かではないものも、たくさんあります。読解力が高くなると、クリティカルに読む力もついてきます。
今は誰もが、どこにいても、ほぼどんな情報でも、手に入れることができます。役立つ情報として読み込むには、疑いを持って読み込むことも必要になります。
まとめ
読解力を鍛える本を2冊紹介しています。共に比較的新しい本であり、現在に関連して書かれている本です。
誰もがメールやSNSでコミュニケーションをする時代です。言葉や文章の読み取り方が、インターネットとスマホによって、大きく変わったのです。
相手を理解するには、文字を読むことに精通していく必要があります。つまり読解力を鍛える必要があるのです。間違えると個人レベルでも大きなミスや損失を受けることがあるからです。
またベネッセ研究所の資料にもありますが、読解力と読書をすることの関係性は明白です。本や文章を読まないと読解力が著しく低下してしまいます。
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