文章の表現力を高めることは、情報を正確に伝える上で非常に重要です。例えば、上司が仕事の指示を部下に出す場面、部下が上司に仕事の状況について報告をする場面、取引先や顧客に伝えたいことを文章に書く場面などで、文章の表現力が必要になります。
文章の表現力を高めるためには、どのようなことが必要になるでしょう。当記事で、文章の表現力を高めるために必要なことを紹介します。
文章の表現力を高めるために必要なこと
文章の表現力を高めるためには以下のようなポイントがあります。
1)語彙力を鍛えること
2)文章構成を意識すること
3)シンプルな表現を心がけること
4)本を読む習慣をつけること
5)言葉の力を信じること
文章の表現力を高めるには語彙力を鍛える
文章の表現力を高めるためには、適切な語彙力が必要です。語彙力とは、単語や表現を性格に使い分け、文章をより魅力的にすつための重要なスキルです。一般的な言葉や表現だけではなく、専門用語や英語の単語なども覚えることで、より正確で鮮やかな表現ができるようになります。
また辞書や類語辞典を使って、同じ意味の言葉をいくつか覚えることも有効です。語彙力を鍛えることで、読み手にとって分かりやすく、情報量が多く伝わる文章を書くことができるようになります。
あなたの周りに「かわいい」「すごい」を連発する人はいないでしょうか。いつも行動を共にしている友人なら「かわいい」「すごい」は、声の感じから微妙な感じがわかるのかもしれません。
しかし年代の違う相手や、生まれ育った環境の相手であれば、「かわいい」「すごい」と言われても、どうかわいいのか、どのようにすごいのかは分かりません。これが文章であれば、尚更分かりにくくなります。
一つのことを表現する場合に使える言葉や文章をたくさん知っておくことも重要です。つまり語彙力を高めるということです。たくさんの言葉の意味(語彙)を知っているだけではなく、同じような意味でも他のことで言い換えすることができる語彙力が高まることで、表現力には大差がついてきます。
語彙力を高めるということは、言葉の意味を知ることや言葉の使い方を知ることです。辞書の使い方や語彙力をトレーニングするアプリで練習することも大事です。辞書も紙の辞書ではなく、アプリやネット検索でいつでも調べられる状態にしておくことをおすすめします。
文章の表現力を高めるには文章構成も考える必要がある
文章の表現力を高めるためには、文章構成を意識することが大切です。文章構成とは、例えば序文・本文・結論などというように、一定の構成になっていることを指します。それぞれの部分で、適切な情報を伝えることが大切です。また段落を上手く使って、文章を読みやすくすることも重要です。文章構成を意識することで、論理的にまとまった文章を書くことができるようになります。
文章の表現力を高める目的には、相手にわかりやすく伝えるという意味もあります。分かりやすく伝えることのポイントには、分かりやすくなる文章の構成があります。場面によっては、まず結論を述べて、その理由と根拠とつなげる校正も有効です。
文章構成にはいくつものバリエーションがあります。小説を書くのであれば、「起承転結」の構成が一般的です。しかしビジネスシーンでは、目的が異なりますので、使われません。ビジネスシーンでは次のような文章構成が分かりやすく一般的とされています。
・序文・本文・結論
・PREP法(結論・理由・具体例・結論)
・ピラミッド型(結論や主張に対する根拠を漏れなくダブりなく積み重ねる)
・AIDA法(注意・関心・欲求・行動の順番に構成。セールスレターなどに使われる)
ビジネスシーンで分かりにくいとされる文章は、「起承転結」の構成で書かれている文章に多いです。最後まで読まないと何を言いたいのかわからない文章は、小説では有効ですが、ビジネス文書では相手にストレスを与え敬遠されます。
文章の表現力を高めるにはシンプルな表現が大事
文章の表現力を高めるためには、シンプルな表現を心がけることが必要です。複雑な表現や冗長な表現は、読み手にとって読みにくく、情報が伝わりにくくなってしまいます。できるだけシンプルで明確な表現を心がけ、読み手がスムーズに読み進められるようにすることが大切です。
また一つの文で、複数の意味をもたせることも避けるべきです。文章の中で、主語と述語の関係性が変わってしまったりすることが、読み手にとって文章がわかりにくくなる原因になります。シンプルな表現を心がけるとは、具体的には一文の文字数を少なくすることも一つの方法です。
文章の表現力を高めるには本を読む習慣をつける
文章の表現力を高めるには、本をよく読む習慣をつけることは効果的です。読書や新聞、雑誌などで、さまざまな文章を読むことで、表現力を高めることができます。また、自分が書いた文章を読み返し、改善点を探すことも大切です。
本を読むことは、語彙力を鍛えるだけではなく、文体や表現方法の参考にもなります。自分の文章を読み返すことも、不必要な表現や不明確な表現を見つけ出し、より良い文章を書くことができるヒントになります。
文章の表現力を高めるには言葉の力を信じること
文章の表現力を高めるためには、言葉の力を信じることが大切です。自分が書いた文章に自信を持ち、伝えたいことをはっきりと表現することが大切です。また、自分の意見や考えをしっかりと文章に表現することも、表現力を高めるためには必要なことです。自分が思うことを正確に言葉にできるようになることで、文章の表現力を高めることができます。
文章表現力の鍛え方
文章表現力を鍛える必要はご理解いただけたと思います。
表現力を鍛えるトレーニングが必要です。表現力が低い人がよく使ってしまう言葉に、「形容詞」「副詞」があります。前述の「かわいい」「すごい」などもそうです。表現力を鍛えるトレーニングの一つ目は、「かわいい」「すごい」を使うのを辞めることです。
文章表現力を鍛えるトレーニング|形容詞と副詞を使うのをやめる
トレーニングというと少し印象が違うかもしれません。実行することは、「かわいい」などの形容詞を使わないことです。「かわいい」「すごい」と言いたくなったら、他の言葉に言い換えてください。
文章の表現力がない人は、形容詞と副詞を使いたがります。実はビジネス文章に形容詞を使うのは、とてもリスクが高いのです。相手と自分が同じ意味として、理解し合えていない可能性があるからです。
それが仕事の重要な部分に関係している場合、先ほどの「そういう意味だと思わなかった」となります。営業と顧客の関係だけではありません。仕事の指示をした上司と受けた部下。取引の打ち合わせをしている取引先担当と自社の担当窓口社員。電話をかけてきた(メールで問い合わせをしてきた)相手と電話を受けた社員(メールを受けた社員)などなど。
これらの関係性の中で、会話の中に形容詞と副詞が含まれるほどに、互いに誤解するリスクが高まります。形容詞は、物事の状態を表現する語です。副詞は、他の言葉を詳しく説明する語として使われます。
なれた言葉を言い換えるのは、最初のうちは難しいかもしれませんが、表現を考えて話すことで相手に伝わりやすくなります。形容詞を止めると、細かく具体的に話したり、書いたりするようになるはずです。これまで、雰囲気で流して話した言葉を止めるのはストレスかもしれません。しかし、続けている限り文章の表現力は低いままです。
・「い」で終わる形容詞=嬉しい・楽しい・丸い・四角い・青い・赤い、など
・「な」で終わる形容詞=親切な・対照的な・効果的な・イージーな・ハードな、など
・ゆっくり・とても・なるべく・あいにく・まさか・わざわざ・もっと・決して、など
文章表現力を向上させるには具体的に|情報を正確に
上司から部下に仕事の指示がなされます。その時に、上司が部下に「なるべく早く頼むよ」と言います。
よくあるケースです。表現力がある上司なら、例えば「明日の朝9時までにレポートにして提出してください。」と追加します。
部下は、これで期限と依頼された仕事の形態を知ることができます。部下の現状抱えている他の仕事の関係によっては、「明日の朝9時のレポート提出は無理です」となるかもしれません。
前述の状態で、上司から追加の言葉もなく、部下からの確認の言葉もないまま、次の朝を迎えると、上司から「レポートはできた?」と言われるかもしれません。どちらに非があるのかは別として、発信側の表現力が不足していたことに最大の原因があります。
実際には同じような状況はどこの会社でも起きています。上司と部下ではなく、会社と顧客という場合もあります。顧客側の表現力不足があったとしても、責任を問われるのは、会社の担当者です。
文章の表現力向上のためには相手の専門度を見極める
繰り返しですが、相手にとって分かりやすい文章表現でなければなりません。
ポイントは、文章を書いている自分がわかりやすいと感じることではありません。文章を読んでくれる相手にわかりやすいと感じてもらう必要があります。
専門用語に詳しくない一般ユーザーに向かって、専門用語だらけで説明している販売員や営業は、間違いなく成績が悪いです。相手のことを考えていないからです。
一般ユーザーには専門用語を一般的な言葉に翻訳して伝える必要があります。逆に上司や取引先担当が相手なら、プロ同士で伝わる言葉を使って表現する必要があります。
相手の専門度レベルに合わせて、言葉を使い分けることも文章の表現力に必要な要素です。相手が使い慣れている言葉の専門度に合わせた、言い換えができる言葉を知っておく必要もあります。つまり語彙力を増やすということです。
語彙力がない人は、ボキャブラリーがないと言われます。ワンパターン的な表現しかできない人です。ボキャブラリーは、本を読んだり、普段話をしない人と話したり、時に言葉を知らないことで恥をかきながら覚えていくものです。
ボキャブラリーを高める方法は、次のとおりです。
1)本を読むこと(知らない言葉に出会う場を増やします)
2)意味がわからない・わかったと思っている言葉の意味をスマホアプリで調べる(とにかくたくさん調べる)
3)覚えたばかりの言葉をすぐに使い倒す(使える場面で使いまくってください)
スマホに漢字のアプリをインストールして、わからない言葉に出会うたびに、調べてください。
調べて意味がわかったら、話し言葉や文章を書く際に意識的に使うことです。
まるで前から知っていたかのように、どんどん使うことです。
調べて使う、知っていたかのようにどんどん使う。これで表現力は必ず向上します。
文章の表現力を一気に向上させる簡単なコツ
文章の表現力を高める方法について紹介してまいりましたが、すぐにできる簡単な方法はないのか、という方もいるかもしれません。
冒頭でも解説しましたが、文章の表現力には、情報を正しく伝えることが必要です。そして相手が理解しやすい言葉遣いをする必要があります。つまり自分が伝えたいことが正しくもれなく分かりやすく表現されている必要があるのです。
最も簡単なコツをお教えします。それは5W1Hで、文章内容を表現することです。もちろん最低限必要な敬語に関する言葉遣いは使わなければなりません。
5W1Hとは、子供の頃に学校で教わった記憶がある人が多いはずです。とてもシンプルで、子供じみて感じる人もいるかもしれませんが、自分にとっても相手にとっても、分かりやすい構成になるはずです。
いつ(when)・どこで(where)・誰が(who)・何をした(what)・なぜ(why)・どのように(how)に、相手に説明したいことや伝えたいことを当てはめてみてください。もし5W1Hに、上手く当てはまらない場合や不足している場合は、よく考えてみてください。
あなたの話や文章の表現が相手にうまく伝わらない原因はそこにあるのだとわかるはずです。
文章の表現力を高める本
文章の表現力を高めるためのいくつかの優れた本を以下にいくつか紹介します。
形容詞を使わない大人の文章表現力
書籍『形容詞を使わない大人の文章表現力』は、国立国語研究所教授の石黒圭氏による著書です。本書では、形容詞を使わなくても、文章を読みやすく、説得力のあるものにするための方法を解説しています。
石黒氏は、形容詞は、文章を簡潔にしたり、具体的にしたりするための重要な役割を果たしますが、使いすぎると、文章が冗長になったり、主張がぼやけたりすると指摘しています。また、形容詞は、主観的な表現であるため、読み手に誤解を与えることもあります。
本書では、形容詞を使わずに、文章を読みやすく、説得力のあるものにするための具体的な方法が解説されています。例えば、
- 形容詞を置き換えて、主観的な表現を客観的な表現に変えることで、読み手に誤解を与えないようにする
- 形容詞を省略することで、文章を簡潔にしたり、具体的にしたりすることができる
- 形容詞を具体的なイメージに置き換えることで、文章をより印象深いものにする
文章表現術講座
書籍「文章表現術講座」は、文章を書くための基礎知識やテクニックを解説した本です。著者の森下泰則氏は、文章を書くことを仕事にしているプロの文章家であり、本書では、その経験から得たノウハウを惜しみなく披露しています。
本書の内容は、文章の構成方法、論理的な文章の書き方、文章の読みやすさの向上方法、文章の誤字脱字のチェック方法など、文章を書く上で役立つ情報が満載です。また、本書には、文章を書くための練習問題も掲載されているので、自分で文章を書く練習をしながら、本書の内容を学ぶことができます。
本書は、文章を書くことに苦手意識を持っている人や、文章を書く力を向上させたい人にとって、必読の一冊です。
以下は、本書の章立てです。
- 文章表現術の基礎
- 文章の構成
- 論理的な文章の書き方
- 文章の読みやすさの向上方法
- 文章の誤字脱字のチェック方法
- 文章を書くための練習問題
本書は、初心者から上級者まで、どなたでも役立つ内容となっています。
「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた
書籍「「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた」は、文章術のベストセラー100冊から、そのエッセンスを抽出・分析し、1冊にまとめたものです。著者の藤吉豊氏と小川真理子氏は、それぞれライターと編集者として20年以上の経験があり、本書ではその経験から得たノウハウを惜しみなく披露しています。
本書の内容は、文章の書き方、文章の構成、文章の論理性、文章の読みやすさ、文章の誤字脱字のチェックなど、文章を書く上で役立つ情報が満載です。また、本書には、文章を書くための練習問題も掲載されているので、自分で文章を書く練習をしながら、本書の内容を学ぶことができます。
本書は、文章を書くことに苦手意識を持っている人や、文章を書く力を向上させたい人にとって、必読の一冊です。
以下は、本書の章立てです。
- 文章術の基礎
- 文章の構成
- 文章の論理性
- 文章の読みやすさ
- 文章の誤字脱字のチェック
- 文章を書くための練習問題
本書は、初心者から上級者まで、どなたでも役立つ内容となっています。
まとめ
文章の表現力について解説しました。文章の表現力を誤解していなかったでしょうか。
小説家のように、文章の表現によって相手を感動させたりコントロールする場合の表現力は、社会人に必要な表現力ではありません。
社会人に必要な文章の表現力は、大事な情報を正しく相手に伝え、相手が分かる言葉で表現する能力です。
文章の表現力をアップさせるには、今までついつい使っていた「形容詞」「副詞」をできるだけ使わないことと、本を読んで知らない言葉に出会うことです。
出会ったら、すぐに調べて、すぐに使うことです。この繰り返しで、あなたの文章の表現力は必ず向上します。
社会人には、文章の表現力がないばかりにクレームになったりトラブルに発展することがあります。「そういう意味だと思わなかった」ということが、自分か相手の心の中に生まれます。
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