読解力はテキストを読んで内容を理解する能力のはず、と思われた方は、当記事のタイトルに違和感を持たれたかもしれません。
確かに一般的には、読解力の意味は表面的には、文字を読んで理解するというように記載されていることが多いです。ただこれは、国語教育においての意味でしかありません。
現実社会において読解力の意味は、「相手の言うことを理解する能力」となり、場合によっては、「相手のことを理解する能力」とまで広い意味になります。
読解力を鍛えるには本を読むだけではできない|仕事に必要な能力
誤解のように先にお伝えしますが、本を読んでも無駄ということではないのです。それだけでは、不十分なのです。
社会人となって働く場合に、本をたくさん読んでいる人は、文章から理解する能力はあります。しかし実際には、社会の中での業務は、全てが文書化されているわけではありません。むしろ、口頭での指示や連絡しかないという企業もあるでしょう。
本を読むだけでは読解力はつきません
上司から部下への業務指示、先輩や同僚からの連絡など、相手が何を言っているのかを文書ではなく、口頭の言葉で理解する場面が実務にはたくさんあります。
また、状況によっては明確に言語化されていない場合もあります。そういう場合には、想像力を働かせて、「それは、こういう意味もありますか」と確認する必要がある場合も少なくありません。
自分とコミュニケーションを取る関係性のある相手(上司・同僚の他に、顧客や取引先)が、「言わんとすること」までを考える必要があります。
すでに社会人でいる方は、「そんなことは毎日のことです」とおっしゃる方は、すでに読解力を身につけているのだと思います。
また、「そんなことまでは分からないよ」という方は、本を読む能力はあると思いますが、現実社会に必要な読解力は、まだ不十分ということになります。
現実社会においての読解力は、単に「書類」や「メールの業務指示や連絡」を読んで理解することだけではありません。表現が不十分になりがちな「口頭での業務指示や連絡」についても文書同様によく聞いて理解すること、そしてよく考えることと、考えた内容を必要があれば相手に再確認すること、などを複合的に行うことによって、読解力の高い仕事につながっていきます。
読解力をつけるには本を読んで考える習慣|読解力は仕事に必要な能力
読解力を鍛えるために本をおすすめするなら、この1冊です。
帯にも書かれているように大人(社会人)にぴったりの内容だと思います。著者の佐藤氏の言葉によれば、読解力とは次のようになります。
「相手を正しく理解し、適切に対応する力」
出典元:読解力の教科書|佐藤優
また、読解力のある人との仕事は楽しく、読解力の乏しい人との仕事では、誤解や曲解によってトラブルが起きるとしています。
まさに前述した会社内の場面と重なるようです。
読解力が高い人は仕事がうまくいく|相手の気持ちを考える癖がついてる
本を読むだけでは読解力がつかないことを紹介しましたが、本を読みながら「考える」ことを習慣にしている人は、読解力は高くなります。
営業ならば販売成績が良い人なども含めて、優秀と言われる人は、読解力が高い傾向があります。営業以外にも、人は多くの場合に、誰かと接して仕事をしています。
人と接するという場面で、読解力が高い人は、相手が発した言葉や、なぜか発しなかった言葉、そして態度や視線や表情などから、複合的に今の相手の気持ちを考え推測して、次に発する言葉や行動を決めています。
顧客や取引先、そして同僚や上司に対しても、接するときに、相手の気持ちを読んで理解しようとしています。まさに、これも読解力です。
逆に読解力が低い人は、相手が発した言葉だけを理解し、配慮不足の対応をして、失敗してしまうことが多いです。もし相手が取引先や仕事のパートナーであれば、トラブルに発展することもあります。
読解力とは、「学校教育で学ぶことではなかったの?」という人に、紹介したいことがあります。それは世界の子供を対象に行われているPISAという学力テストのことです。
PISAの読解力の定義には書かれています
PISAとは、簡単に言ってしまいますと、国際的な学力テストです。世界の主要各国が参加し、15歳の子どもを対象に、学力テストをおこなっています。
そしてPISAの結果で、日本の子供たち(15歳)の読解力が毎回のように順位が落ちていることが話題になりました。
順位が下がることは気になりますが、それよりも気になったのは、日本でいう読解力とPISAが定義している読解力が違うことです。
PISAの読解力の定義|読んで理解するだけではない
定義されている文章は少しわかりにくいですが、次の通りです。
「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」
出典元:文部科学省 PISA調査における読解力の定義
(わかりにくい文章ですが原文のままですので、ご理解ください)
つまりPISAで示されている読解力の定義は、日本型の読解力(テキストを読んで理解する能力)の意味を大きく超えているのです。
またPISA調査に対するように学校教育の提案書と出版されている、「読解力とは何か|横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校FYプロジェクト」の中で、次のように触れられています。
「読解力」とは、聞くこと・読むこと・考えること・思うこと・話すこと・書くことの総体です。
また立正大学心理学部の大津教授によれば、PISA型読解力は以前から想定されてきたことだが、日本の「読解力」の指導は「読み」の指導と考えられてきた。今後は「書くこと」「話すこと」の指導が必要である、としています。
PISA型読解力を前提に、「テキストを理解・評価しながら読む」「テキストに基づいて自分の考えを書く」「自分の意見を述べる」を改善策としています。
まとめ
読解力を身につける本の紹介記事と思われた方には、肩透かしの内容かもしれません。本は1冊しか紹介しておりません。
読解力とは、文字を読んで内容を理解することと思われていますが、現実社会においても、PISAにおいても、その範囲を大きく超えています。
読解力を、相手のことを理解し対応する能力と捉えて、よく聞いて、よく考える習慣を身につけることが読解力を高めることです。
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