読解力と理解力は、漢字が違う通り、言葉の意味も違います。
意味はある程度近いですが、明確な違いがあります。
共通していることは、どちらも不足していると仕事に悪影響が出てしまうということです。しかもマズイことに、外形的には周りの人からみて、読解力がない人なのか、理解力がない人なのかが、判断できません。
しかも更に悪いことに、当人は理解していないのに分かったつもりでいて、「分かりました」と答えてしまうのです。
読解力と理解力の違い|重要な2つの能力
読解力と理解力は違うものです。違いが分からないままに、分かったつもりでいると、理解力不足のまま固まってしまいます。キャリア社員によくいる、「分かったつもりで分かっていない残念な人」になってします。
近い意味はありますが、別の意味があります。
読解力と理解力の違いは
読解力とは、一般的には国語教育の読解力として、文章を読んで内容を理解する能力とされています。しかし今は仕事や日常において、文章を作成した作者・相手が何を言いたいのかを読み取る力と考えられています。
読解力には「相手の存在」があります。相手や作者が書いた文章・話す文章から、何を言いたいのか、行間までを読んで言わんとすることは何かを理解する(読んで解する)のです。
一方、理解力は様々な物事の道理・仕組みを把握し正しく判断する力(理を解する)です。文章の理解力と表現すれば、読解力と同義に思えますが、同じなのは文章を読んで理解するという範囲までです。理解する対象は、文章そのものです。
読解力と理解力には似ている点もありますが、先の説明の通り、違いは明確です。
読解力の意味|読解力とはどんな力
国語教育の読解力の意味は、かなり狭く認識されています。しかしOECDのPISA読解力(世界41カ国の15歳対象にした調査)で示されたように世界の認識では、読解力は文章を読んで理解し、さらに利用と評価と熟考することとされています。国語の読解力に限定されていないのです。
問題(電化製品のWebサイトに書かれた説明の情報を見極める)から、情報についてクリティカルに読んで調べた結果を、自分の言葉で記述するというテストでした。日本の学生は無回答が目だった(OECDの平均よりかなり多い)ようです。
つまり読解力を国語の読解力だと限定して理解しているのは、日本だけなのです。
しかし社会人の仕事の現場では読解力とは、相手の言いたいことを理解する力として認識されています。その過程では、文章を読むときに、クリティカルな読み方や相手の心情を想像する力を使って、行間を読み取るのです。
面談している場面では、相手が発した文章だけではなく、表情や目の動きなどから空気を読むのです。仕事や日常の中で、読解力という力はかなり重要な能力になっているのです。
読解力を高めるためには、以下の方法が効果的です。
- 本や新聞、雑誌など、さまざまなジャンルの文章を読む。
- 文章の構造や論理を理解する練習をする。
- 文章の内容を自分の知識や経験と関連付けて理解する練習をする。
- 読書感想文を書く。
- 友達や家族と文章について話し合う。
読解力を高めることで、学校の授業や仕事、日常生活など、あらゆる場面で困難を乗り越え、成功を収めることができます。
なぜ読解力が必要なのか
読解力がない社員と上司に起きる初歩的なケースを紹介します。例えば、上司から「ある資料の作成」を依頼されたとします。
読解力がない場合、極端な事例では、上司から仕事の指示を受けても、仕事に着手する事ができないという嘘のような現象が起きます。しかし仕事の内容を説明を受けている途中で、上司から「分かりましたか」と尋ねられると、「はい」と答えるのです。
上司は、まさか読解力がなくて仕事内容が理解できていないのだと気づきません。上司は不思議に思いながら、再度確認します。「分からないところがあれば言ってください」と言われても、「大丈夫です」と返事をしますが、一向に仕事が始まる様子がありません。ここで上司が再び声をかけると、「今やります」などと感情的に声を荒げたりするのです。
これは空想ではなく、現実の一場面です。このケースの場合、読解力がないだけではなく、語彙力も不足している可能性があります。言葉の意味も分からないし、文章の意味も分からないという状態です。
社歴が数年という社員の場合になると、少し変わります。指示を受けると、理解しているつもりになって、とりあえず手を動かします。しかし読解力がないので、返事はしても正確に理解していません。その結果、上司に依頼された資料とは別の内容の資料が完成してしまいます。
もし上司に「依頼した内容と違う」と指摘されても、「私はこの方がいいと思います」などと主張するのです。これもまた、ありがちなケースです。
これらは仕事の一場面ですが、似たようなケースはたくさんの企業内で起きています。読解力がないと、何を言われているのかわからないのです。紹介した事例は社内の場合ですが、社外との関係性でも起きる可能性があり、クレームやトラブルになって発覚します。
読解力は、現代社会を生きていく上で欠かせない能力です。読解力を身につけることで、より豊かな人生を送ることができるでしょう。
理解力を高めるための具体的な方法は、以下の通りです。
- 本を読む
- 新聞を読む
- ニュースを見る
- 会話に耳を傾ける
- 質問する
- メモを取る
- 文章を要約する
- 文章の構造を理解する
- キーワードを探す
理解力の意味|理解力とはどんな力
読解力が「読んで(文章や言葉や行間)解する力」であることに対し、理解力とは「理(ことわり)を解する力」となります。
理(ことわり)とは、物事の道理や仕組み・筋道などです。それを把握して正しく判断する力ということです。
先に紹介した「資料作成のケース」で解説すると、もしかすると読解力はあるが資料作成の方法についての理解力がないのかもしれません。つまり、資料作成をするように言われたことについて、どんな資料を作ればいいのかまでは理解できたのかもしれません。
しかし肝心の資料作成についての方法や注意点・具体的手順などについての理解がない可能性もあります。その場合は、相手が何を言っているのかは理解しているのかもしれません。
ですので、読解力と理解力は近い関係性にはありますが、違いがあるということになります。
なぜ理解力が必要なのか
今回紹介している「資料作成の仕事のケース」から、理解力がないことを想像すれば、なぜ必要なのかは簡単に想像できます。理解力がない場合は、物事の道理や仕組みなどについて理解していないのですから、自覚もあるはずなのです。
厄介なのは、自分の理解力が低いことに気づいていない場合です。よくあるケースでは、理解していると思い込んでいます。すでに思い込んでいますので、それ以上に理解力を高めるために関連書籍を読んで勉強するなどの行動はしません。ですので、理解力が低いままなのです。
なぜ理解力が必要なのかと言えば、社会人の場合は簡単なことです。自分のやるべき仕事は何なのか、その仕事の具体的なやり方はどうすれば良いのかを理解していないと、その先にはとても不幸な事が起こるからです。仕事への理解は、最も身近であり不足していると、その影響はとてつもなく大きいです。
例えば、営業マンの仕事は何かといえば、契約を上げる事だと理解している人は意外に多いですが、正しくは少し違います。営業マンの仕事は契約を上げることではなく、見込み客や顧客を増やすことです。
同じくビジネスマンの仕事は、社外で利益を上げる活動をして、社外から会社にお金をもたらすことです。会社に出勤して時間通りに働く事が本質ではありません。
まとめ
読解力と理解力は近い意味はありますが、違いは明確です。
社会人として世の中で仕事をして働いていくには、両方が必要です。どちらが欠けていても、仕事にはなりません。もし自分に不足している可能性を感じたら、本を読んで、勉強をする事です。
仕事のやり方に対しての理解が不足している事がわかったら、謙虚に理解力不足を明白にして、教えてもらう事です。学校にとって学生は学費を払ってくれるお客様です。しかし社員は会社にとってお客様ではありませんね。
読解力が不足してるなら、自分で努力して読解力をアップさせるしかありません。教えてもらえるものではないからです。理解力が不足しているなら、上司や先輩にそのことを明らかにして、教えてもらうことです。明白にしなければ、気づかれないまま通り過ぎてしまい、理解力がないまま年数だけのキャリア社員になってしまいます。
関連記事一覧
読解力と理解力の違い|何が違うのか*当記事