OECDがおこなっているPISA(国際学習到達度調査)が2000年から3年毎に行われています。
2018年には読解リテラシーを中心分野として、科学的リテラシーと数学的リテラシーの3分野の調査が行われました。
日本は、読解リテラシーで前回よりも大きく順位を下げて話題になりました。
2021年に予定されていたPISAはコロナ禍の影響で延期され、2022年に数学的リテラシーを中心分野として、科学的リテラシーと読解リテラシーの3分野の調査が行われます。
前回下げてしまった読解リテラシーが改善されるのかどうか、大変気になります。
読解力の低下は何故起きているのか
PISAの2018年の結果で、読解力が2015年の8位から15位まで順位を落としたことが、当時話題になりました。
2018年のPISAでは世界79カ国の60万人の15歳が対象とされています。
日本が順位を下げてしまった読解力は、2018年のPISAの中心分野でした。
読解力低下の結果につながった問題の違い
日本の国語における読解力とは、文章を読んで内容を理解しているかどうかについて、試されるものです。
しかしPISA型読解力の定義では、文章の理解において、利用・評価・熟考などが求められています。
それが解答の仕方に表れていました。自分では選択式や単語や文節による記述式がほとんどなのに対し、PISAの解答ではこの他に自由記述式が用意されました。日本の15歳は自由記述式の解答実績が非常に低かったのです。
読解力低下の原因
読解力低下の原因としていくつか考えられています。
よく取り上げられるのは、読書をしないことに原因がある説と、スマホとSNSに原因があるとされる説です。
原因1|読書をしない
日本の読書頻度(毎日・ほぼ毎日本を読むか)は、先進諸国の中で低い方であることがわかっています。GfKの2016年の読書頻度に関するグローバル調査によれば、調査対象17カ国の中で日本は15位でした。
たしかに、読書頻度が少ないということは、読解力低下と強い関係性がありそうです。
原因2|スマホの普及
今の時代は何か分からないことがあれば、本を読まなくても、スマホでググればいいと言われます。関係性は否定できないものの、日本のスマホ普及率が他国と比べて多いのであれば、読解力低下の原因との関係性を納得できるのですが、そうとも言えないのです。
少し前のデータですが、日本のスマホ普及率は2017年で73%です。アジア圏の中では、むしろ低い方です。ヨーロッパ諸国との大きな差異はなく、読解力低下や読書頻度が少ないこととの因果関係が見えてきません。スマホでググることが本を読まない原因だとすれば、諸外国も同じはずです。
原因3|SNS
SNSの短文のコミュニケーションにも原因があるとされています。実際には、短文とも言えないような数文字の言葉でのコミュニケーションを続けているのですから、長いメール文章の読解力が下がっている可能性はありそうです。文章力が劣化していることは明白です。
上司からの指示アドバイスに対して、若い社員が「了解」と返信するなど、笑えない事例もあります。読解力低下の原因の一端は確かにありそうに感じられますが、調べてみるとSNSの短文返信は世界でも共通の傾向であることがわかります。
ただ日本の読解力低下への直接影響を考えると、曖昧です。
原因4|漫画
読解力低下について、日本特有の要素を考えていくと、漫画の影響があるのかもしれない、という推測があります。日本のアニメ文化は世界に誇れるものとも言われています。
しかし漫画については、読解力低下の一因になっているかもしれないと言わざるを得ません。日本にあって、世界にないものです。また、漫画ばかり読んでいる人には、文章を書くと句読点がないという特徴もあります。漫画に句読点がないからです。
不思議なことに、後で自分が書いた文章なのに、句読点がないので読む苦労をしています。
読解力低下は大人にも
読解力の低下は大人にも起きています。読解力や語彙力は、生まれ持っての能力ではありません。生まれたあとの環境によって身についた能力です。環境の中でも最も効率よく、読解力や語彙力を身につけられる方法が読書なのです。
ですので、読書をしない人の割合が半分近くいるという事実が、読解力低下を大人にも作用していると考えられます。大人の中にも読書は市内が漫画は読むという人はいます。
そのことは、文章を書いてもらうとすぐに分かります。前述のとおり、漫画では多くの場合、句読点がありません。その文章スタイルに慣れてしまっているため、仕事のメールや報告書を書くときにも、句読点を使わずに文章を書いてしまうのです。
言葉を知らなさすぎて、会話にならないこともあります。詳しく聞いてみると、会社の中でのコミュニケーションについて、言葉自体は聞いたことがあるが、意味がわからないことが半分以上(個人差があるものと信じたい)あるのです。
そんな状況で仕事をしていのですから、高いパフォーマンスを期待するのは難し異のです。むしろトラブルやクレームが発生しないように、難易度が低い業務しか刺せられなくなってしまいます。
実は、この手の事例は多くの会社が抱えている問題です。中小企業から上場企業までです。本来は、こういう方は出世をしないはずですが、日本では会社によって年功序列の名残は残っています。そのため社歴が長くなると、「お試しで」昇進するケースがあります。しかし、出世して役割が変わっても本を読むなどの改善をしない人は、非常に苦労しています。場合によって降格人事もあります。
まとめ
ここ数年PISAの結果を受けて、子どもの読解力不足や、「読解力」というワード自体にも関心が高まっているように感じられます。大人自身も、読解力について、不安や問題を抱えている可能性があります。
読解力低下が何故起きているのか。何故日本の読書頻度は、世界とくらべると低いのか。具体的な原因は分かっていません。
ただ結果としては、日本の平均賃金がOECDの世界平均よりもかなり下にあることと、読書をしない人が多いことは、世界の傾向(読書頻度が高い国のほうが平均賃金が高い)とも一致しています。
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